いよいよ来年から「マイナンバー制度」が施行されます。
始まってしまうものは仕方ないので今更是非を問うつもりはないのですが、
原則生涯同じ番号を使い、今後様々な情報と紐付けられる可能性のあるマイナンバーをどう管理するのか、という点について
フリーランスの場合は会社員とは比較にならない大きなリスクが存在するのではないかと感じたのでまとめておきます。
▼マイナンバーの提出先が複数になる
会社員の場合、基本的に所属している会社は1つ、バイト掛け持ちのような場合でもせいぜい2〜3箇所がいいところでしょう。
しかしフリーランスの場合は、通常いくつもの取引先を持っているのが普通ですし、
新規開拓営業や紹介などによって取引先は基本的に増える傾向にあります。
(全く増えない、もしくは減り続けるのはマイナンバーとは別の意味で危機です;)
その取引先が「源泉徴収義務者」に該当した場合、フリーランスが請求した金額は相手先企業によって
源泉徴収された上で支払いが行われます。そして、来年度からは企業が源泉徴収した金額を税務署に通知する書類(支払調書)に
マイナンバーを記載する義務が発生します。
つまり、源泉徴収する取引先の数=マイナンバーの提出先の数 となるわけです。
10社あれば10箇所、20社あれば20箇所、100箇所あれば100箇所に、重要個人情報の塊であるマイナンバーを提出する必要が出てくるわけです。
新規の、1回ポッキリになるかもしれない相手であってもです。
一度提出したマイナンバーの管理は、相手に任せるしかありません。
渡した相手が法律にのっとって厳重に管理してくれる保証は、ありません。
もちろん多くの企業はちゃんと管理してくれるでしょう。
ですが、取引先の数が増えればその分、不手際をやらかす企業にあたってしまうリスクは当然上がります。
▼マイナンバー廃棄の基準が不明確
会社員やアルバイト等の場合、その企業を退職すればマイナンバーは廃棄されることが法律に明記されています。
しかし、外注先の個人事業主のマイナンバーについては、廃棄の基準が法律上はありません。
常識的に考えれば「取引がなくなった相手」のマイナンバーは保管する意味がありませんので廃棄対象になると思われますが、
「単にしばらく発注していない相手」と「今後も取引をしない相手」をどう区別するのでしょうか?
その基準は、法律上は何も明記されていないため、各企業が個別に判断するしかなく、
理論的には一度入手したマイナンバーを永久に保管(放置)し続けることも可能なわけです。
そういう企業はそもそも「ちゃんと管理しよう」という意識に欠ける可能性が高いため、
ずさんな管理により流出させてしまうリスクも高いと思わざるを得ません。
▼万が一流出してしまった場合の手続きを考えると頭が痛い
実際にはそうそう流出・悪用されるなどということは無いと思いたいですが、
上記の理由によりフリーランスの場合は会社員よりも格段に流出のリスクは高く、
フリーランスを続ける限り自衛の手段がほとんど無い状況です。
もし万が一流出したことが確定した場合、法律に基いてマイナンバーを再発行することはできます。
できますが、当然、これまで提出した各所へのマイナンバー書き換え手続きを全てやり直さなければなりません。
何十とある取引先も全てです。
杞憂にすぎないかもしれませんが、もし現実になったらクソとても面倒くさいです。
▼個人事業主への発注をためらう企業が出るのでは?
あとこれは憶測にすぎませんが、マイナンバーの管理は企業にとっても結構な負担なはずです。
従業員のマイナンバー管理は仕方ないとしても、外注先のマイナンバーまで管理するのは嫌だから、
という理由で、個人事業主への発注をためらう/とりやめる企業が出てきたりすると、商売上がったりです。
幸い今のところ私の周りの取引先からは「取引停止」も「法人成りの要求」も特に聞かれませんが、
ひそかに「フリーランスかぁ。マイナンバーめんどくせぇな」という理由で発注対象から外されたとしても
知る方法がないので分かりません。正直不安しかありません。
▼新規取引先を開拓しづらくなるのでは?
受注する側としても、これまで継続したお取引のある企業さんであれば性善説に基いて信頼することもできますが、
紹介ではない形で聞いたこともない企業からオファーがあった時、
マイナンバーのことが頭をよぎると心理的に請けづらくなるような気がしてなりません。
創業間もないベンチャー・中小零細企業、特に法人成りしたての元個人事業主あたりが
個人に発注しようとした際に「きちんと法律に基いて厳密に個人情報を管理します」ということを
相手に信用してもらわないと受注を断られる、なんてケースも出てきたりこなかったり。
そんなこんなで、フリーランスにとってマイナンバーはハイリスク・ローリターンな制度でしかないな、
という印象です。
そんなマイナンバーの取り扱いに関する不安を可能な限り払拭する方法については、また次回。